資料室便り

松川資料室2013

松川資料室2013                    (2014.1.10記)

1 新たに寄せられた貴重資料

 7月2日、元被告の鈴木信さん(93)が亡くなった。松川事件の正式名称が「鈴木信外19名に対する汽車転覆致死被告事件」と呼ばれていたことからも明らかなように、鈴木さんは事件の中心人物に位置づけられるとともに、被告団の要としても、余人をもっては代え難い存在であった。鈴木さんには、松川資料収集活動の当初から大変なご尽力をいただいた。また、ご本人やご家族のご厚意により、本年も大量の資料が松川資料室に寄せられた。

 これに前後して、太田省次(しょうじ)さん(元被告)のご遺族から多くの関係資料が寄せられたほか、様々な方々から新たに貴重な資料が寄せられた。

 さらに、主任弁護人を務められた大塚一男弁護士(2011.9.3没)の大量資料が、故人のご遺志とご遺族のご協力によって、資料室に搬入されつつある。この大塚資料の幅広さと奥深さは実に壮大なものであり、私たちは今後、この大塚資料を独自のセクションとして整備しつつ、既存の資料との相互補完を通じて、松川資料全体の水準を画期的に向上させるべく心していきたい。大塚資料の整備と活用を通じて、松川資料室が真に「松川学」の発信拠点の役割を果たしていくことが、大塚氏のご遺志に沿うことになるはずである。

2 松川事件無罪確定50周年記念事業への参画

 1963.9.12松川事件第二次最高裁判決が全被告の無罪を確定させてから、2013年はその50周年にあたる。そこで、NPO松川運動記念会を中心にして記念事業実行委員会が組織され、年初から記念事業の具体化が図られた。松川資料室もまた、地元有志のご協力を得ながら、2回にわたって松川資料特別展示を福島大学内で開催した。

 第1回は8.17(土)~25(日)で、鈴木信さんの追悼展示を主眼として、鈴木さん関係の資料約50点に加えて、松川関係資料約100点を展示した。なお、開催期間は、2回の土日を含んで多くの方々が見学し易いように設定したが、8・17は奇しくも松川事件発生の64周年であった。鈴木さんは書の腕前にもすぐれ(毛筆・硬筆・かな文字とも各9段)、見学者の注目を集めた。見学者は550人にのぼった。

 第2回は10.12~13で、松川事件無罪確定50周年記念全国集会(於:福島大学、1400人参加)に合わせて行われた。展示資料は今回も総数150点ほどであったが、会場の中心付近には新着の大塚資料の中から20点ほどを配置した。全国からの見学者たちは、松川事件の歴史的な重みを再認識していた。見学者は400人であった。

3 資料室の見学者は200

 松川資料室の見学者は、北海道から高知県までの広がりで約200人であった。この人数は一見すると、いまだ大震災の前の水準には及ばないが、2つの特別展示の見学者(合わせて950人ほど)も実質的には資料室の見学者であり、合計すれば優に1000人を超えている。

 一般見学者とは別に、無罪確定50周年記念に関連して報道関係者が数多く訪れたほか、研究・著作目的の来訪者もあった。

4 資料室のプレハブ移転

 経済経営学類棟の耐震補強工事が予算化された結果、11月初めに松川資料室と準備室が向いの駐車場に設置された仮設プレハブの1階に移転した。施設の床面積は従来とほぼ同じ程度が確保され、資料室ということで空調設備も設置された。ただし、移転に当たっては、ほぼ半分の資料(一部は整理済み、一部は未整理状態)を民間倉庫に預けた。これは、これから本格化する大量の大塚資料の受入れ・整備のために必要なスペース(空き棚)を確保しておくためでもあったが、その結果、整理作業や活用事業に何かと不便が生じている。

 また、今後の資料室の配置について、大学側は再移転、再々移転を予定しているが、事の進め方を含めて、現場の戸惑いとユウウツは如何ともし難いものがある。

5 資料室スタッフの活動

 資料室の日常活動は、様々な行き掛かりを経て、基礎的な資料整備に関わる「研究員」と、主としてデータベース入力を担うはずのパート女史が行っている。しかし、女史はこの間にますます多くの分野で資料活動に習熟し、今や資料室の生命線を支えるためには欠かせない存在となっている。

 ともかくも本来の「研究員」らしい活動としては、松川事件無罪確定50周年に関連して2つの雑誌に小論を書いた。また、覆面原稿なども幾つか書かされた。松川事件の経験について、東京での学習会に呼ばれて話をした。

                                                                           (研究員 伊部 正之)

〈付記〉

 本稿は、『福島大学地域創造支援センター年報2013』(2014年2月28日発行)に、「資料整備保存事業 (1)松川資料室」として掲載されたものである。